米澤穂信「氷菓」感想 『氷菓』事件
著者
刊行
2001年
あらすじ
何事にも積極的に関わろうとしない「省エネ」を信条とする"折木奉太郎"は、姉からの勧めで古典部に入部する。しかし、古典部には「好奇心の権化」"千反田える"がすでに入部しており、奉太郎は彼女から伯父に関する謎の助けを求めらる。その謎を追ううちに、奉太郎は古典部の文集『氷菓』に秘められた33年前の真実に挑むこととなる。
登場人物
折木供恵・・・奉太郎の姉
遠垣内将司・・・壁新聞部・部長
関谷純・・・千反田えるの伯父
郡山養子・・・32年前の古典部員
感想
米澤穂信さんのデビュー作であり〈古典部〉シリーズ第1弾です。消極的で無気力ぎみ(作品の中では「省エネ」と表現)な主人公が、好奇心旺盛な少女との出会いを契機に"省エネ"思考とは違った方向へ少しずつ振れ始めます。
犯人が用いた巧妙なトリックを暴き出すというものではなく、身の回りで起こる小さな謎をちょっとしたひらめきを軸に推理し("推理"という言葉よりは"推測"という表現の方が近いかもしれません)解き明かしていきます。
全体的にゆるりとした軽い雰囲気でサラサラ読めましたが、「氷菓」の真相に辿り着いた時は切なくなりました。そして、奉太郎の姉がイスタンブールから奉太郎に送った手紙の中の
きっと十年後、この毎日を惜しまない
という言葉が印象に残りました。
奉太郎の"灰色"から"薔薇色"への移り変わりを気にしつつ続編も読んでみようと思います。
また、この作品は「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん!」で有名な京都アニメーションでアニメ化もされています。アニメは見ていないんですけど、読んだ印象としては映像化しても地味な感じになりそうな気がするのですが、どのような演出がなされているか…わたし、気になります!
メモ
『道具主義』
道具主義:科学哲学の世界で使われる言葉で、科学理論を、観察可能な現象を組織化・予測するための形式的な道具・装置であると見なす立場。観察可能な現象の背後にある観察不可能な隠れた実在の真の姿は知りえないとする。この点で科学的実在論と対立する。
『ルビコン川』
ルビコン川:一般にルビコン川の名前は、紀元前49年1月10日、ローマ内戦においてユリウス・カエサルが元老院の命令に背き、軍を率いてこの川を渡った故事によって知られる。この際に「賽は投げられた」(alea iacta est, アーレア・ヤクタ・エスト)と述べたことはあまりにも有名である。「ルビコン川を渡る」(英: cross the Rubicon)という言葉は、その後の運命を決め後戻りのできないような重大な決断・行動をおこなう表現として使われている。
『ハンガー・ストライキ』
ハンガー・ストライキ(Hunger strike):マハトマ・ガンディーにより始められた非暴力抵抗運動の方法の一つである。何らかの主張を世間に広く訴えるために行うストライキの一種。「飢餓(ハンガー)によるストライキ」という意味である。略して「ハンスト」ともいう。
公共の場や受刑者の場合は刑務所内に座り込み飲食を断つことで相手が要求を受け入れなければ餓死に至るという状況に追い込むことで注目を集め、自分の主義・主張を通そうとしたりそれを世に広めたりするのが目的である。完全に飲食を絶つのではなく水だけ、あるいは塩と水だけを摂ったりする場合もある。また流動食だけという限定的な断食もある。
- 作者: 米澤穂信,上杉久代,清水厚
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2001/10/31
- メディア: 文庫
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